自作小説『とぅるば』を書けたところまで投稿します。

小説
03 /13 2017
「よろしい?」
 あの大口を叩き叱られていた女性が余裕綽々で尋ねてきた。
「ご令嬢。わたしとお話しません?」
 礼儀正しく三善が語りかけてきた。一番話ずらそうな人に当たってしまったなとユウは内心困惑する。
「ええ。」
 扉を開け部屋に招く。ラフなパジャマ姿を披露した彼女は可憐に挨拶をした。よくよくみると若々しく、街にいたらチヤホヤされそうな容姿である。座すがは摩耗一族というところ。
 金持ちは美人に目がないといえば偏見を摩耗一族はぴたりと再現している。愛といい彼女といい。ユウは内心乾いた笑いを漏らした。
「寝てしまったかと思った。物音一つしないものだから。」
「は、はは...。」
 皆まで言うな。馬場は不機嫌さと気まずさでさっきから石像と化している。(それもそうよね。動くなって、いったんだから。)
「あらあら、お通夜モードねぇ。」
 双方をみやり、彼女は肩をすくめる。
「喧嘩でもしたのかしら?」
「そんなところ。」
「ふふーん。ところで、あんたたちずっとその格好でいるつもり?」
 温暖な季節だとはいえ生乾きのまま過ごしているのは、気色悪いものだ。目まぐるしい展開にすっかり気を取られ―いや、一番気色の悪いはこの館の空気だった。ともかくユウは遠慮がちに小首を傾げてみせる。
「寝巻きならコマに頼めば持ってきてもらえるわ。風邪でも引いたらどうするわけ?」
(寝巻きってそのダサいヤツ?)
 田舎町のこじんまりとした服屋で売られてそうなセンスである。実質ここは辺境なのだし、センスは人それぞれだ。とやかくは言わない。
「あ、ありがたいわ……。」
「じゃあコマに電話でもしましょう。」
 上機嫌に彼女は謳う。
 このままそうであってほしいと願いながら、終始を見守る。
「暖房もなくて不便でしょう。私達の家って古いだけでなんの贅沢もしてないの。これも当主の趣味ってやつ。」
「倹約家なんですね……。」
「よく言えばね。」
 時代錯誤な内装は当主の趣味か。不思議と違和感はないのだ。最初からこの、館にわだかまった空気だが本当の時間なのではないかと。
 食堂や廊下―そして客間、ユウはこの空気をどこかで浴びた気がしていた。有り触れた体験だ。でもなんだったかまでは思い出せない。
「ねぇ。」
「へっ?」
 じっと穴が開くほど見つめられ、タジタジになる。というより三善のガン飛ばしが怖かったのだが……。
「本当に伽藍先生のお孫さんなのね。」
「えっ、そ、そうよ。」
「神に祈っていたかいがあるわ。」
「あ」
「そ~ねえ。きっと運命的な何かが働いた、とかね。」
 三善はうなずいて一人合点する。
「辛いことがあったぶん、良いことが降ってくる。ホントよねぇ。信じていて、よかった。」
 さっきから独白の如し一方的な会話に胸がざわついている。苛立ちのような、感慨のような、形容しがたい感情。
「つ、つらいこと?」
 馬場がふいに問うた。
「……。」
 三善がいきなりビスクドールに変じた。異常な反応に二人は無意識に目配せをする。悪寒がまだ肌の上で泡立っている。
「こ、こら、失礼じゃない。謝罪なさい。」
「き、きききき、気に触、るようなことを言ってごめんなさい!」

つづく。
小説家になろうでは、きちんとした形で投稿します。
結末まで一応書けているのだけれど、まだまだ穴あき状態なので完全体には近づいてないです……。精神的な問題でなかなか頭の整理がつかなくて……。
では、また。
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inukma

主に一次創作イラストを掲示しています。今は神使とか式神に執着してます。
どうぞなにとぞよろしくです。